◆セーヌに架かる橋

 セーヌ川が流れていなければパリの街はなかったであろう。世界の大都市の多くは海に面した港を持っているか、それとも内陸部であっても川に沿って開けたかのどちらかである。海であっても川であっても人類の発展にとって水は、必要不可欠な条件であるのだ。

 全長776kmのセーヌ川ではあるが、その内パリを流れているのは僅か10kmに過ぎない。その間に架かる34もの橋は、これまでパリの発展の歴史に大いに貢献した立役者である。石橋、コンクリート、鉄橋と、橋の建築構造・デザイン・素材は様々であり、しかし何れも独特の個性を持っており、それぞれの美しさを誇っている。 私が最も素敵だと思ったのは「アレキサンドル三世橋」であった。パリの橋の中では歴史も浅いが、その豪華さは世界でも類を見ない。

 長さ115m、幅45m、橋の四隅にはギリシャ神話の女神とペガサスの像が乗っている。この橋の名前は寄贈者であるロシア皇帝ニコライ二世の父であるアレキサンドル三世に因んでいる。

  そして世界中で最も知名度のあるパリ最古の橋「ポン・ヌフ」は、400年の歳月を経た今も洪水や船の衝突など、様々な災害・障害を乗り越えて一度も壊れることなく生き続けてきた。「ポン・ヌフのように頑丈そのもの」という表現があるのも頷ける。

 憧れのパリの街は語り尽くせない魅力を持っている。セーヌに架かるこれらの橋は、豊かな生活を支えると共に、文化・芸術の美的要素を持った「橋のコレクション」なのであろう。今度は観光船に揺られて見学したいものだ。

 2009年冬