◆プチ・パレ美術館の進化

 文化・芸術を愛せる人は人間が進化した人だと私は思っている。パリにはたくさんの美術館がある。コンコルド広場よりセーヌ川を少し下ると、美の極限とでもいえるアレキサンドル三世橋がある。その橋から見える周りの景色は全てが芸術であるように思えた。

 3年前にリニュアル・オープンしたパリ市立美術館もすぐ横にあった。一般的にはプチ(小さい)・パレと呼ばれているが、実際にはとても立派で素晴らしい宮殿が美術館になったもの。その目の前にはグラン(大きい)・パレが建っており、ここも大イベントが行われる美術館。

  これらは1900年パリ万国博覧会の会場として建設されたもので、その後プチ・パレは自然光を最大限に取り入れた美術館に生まれ変わっている。展示構成は世紀末のアール・ヌーボのガラス細工、絵画、モニュメント彫刻などが中庭に面した明るい回廊にある。次に18世紀の室内装飾、17世紀の風景画、ルネッサンス芸術、ロシアのイコン画など、そしてギリシア古代の壷までを時間の流れとは逆に進むという面白い展示になっている。

 ここの目玉作品の一つにクロード・モネの「ラヴァクールの日没」がある。水と夕日と風景が一つに溶け合う印象派を代表する、モネらしい作品を鑑賞することが出来た。更にセザンヌの「三人の浴女」、マネの「デュレの肖像」、ゴーギャン、シスレー、コロー、クールベ、ロザン、ピサロ、ロートレックなどの作品も。これだけの美術館であって入場無料とは、さすが芸術を愛するパリである。美しく整備された中庭で暫しパリの最後の時間を楽しんだ。

 撮影2009年冬