畳を重ねたような白い岩肌が美しい荒川沿いを散策した。ここは埼玉県秩父郡長瀞町にある長瀞渓谷である。荒川の上流部に位置している。川沿いに畳を一面に敷き詰めたように見える岩石段丘は「岩畳」と呼ばれており、その長さは約800mに及ぶ。
この岩は気の遠くなるような大昔に、海底に積もった砂や泥などで造られた結晶片岩が、長い期間をかけて隆起したものである。その後、荒川の侵食により見事な造形美を作り上げている。これらは地球の歴史、日本の生い立ちを探る上で大切な手掛かりとなっているようだ。1924(大正13)年には国の名勝・天然記念物に指定されている。
足元を確認しながら自然の脅威を感じつつ一歩一歩「岩畳」を歩いた。よく見ると所どころに大小の様々な穴が開いている。これは岩がまだ川底にあった頃、水の渦巻運動によってそれも長い年月をかけて摩耗されてできた甌(おう)穴(けつ)である。なかでも直径1.8m、深さ4.7mもある日本一大きなものもある。川向うの対岸には中国の揚子江の赤壁に因んで名付けられた秩父赤壁が見られた。これは黒色片岩中の鉄分が染み出し、酸化して赤くなったものであるとか。
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