◆天ケ瀬ダムの使命

 それは度肝を抜く豪快な光景であった。余りにも大きな建造物に驚きは隠せなかった。彼此45年も前のことになろうか。私が高校生時代の社会科勉強の一環で、放流中の天ケ瀬ダムを見学した時の印象である。

  ここは一級河川・淀川本流の京都府宇治市にある宇治川流域に建設されたダムで、高さ73mの美しいドーム型アーチ式コンクリートダム。宇治市内への上水道供給をはじめ、総出力59万8千キロワットの水力発電として西日本屈指の規模を誇っている。

  1953(昭和28)年の台風23号では宇治川の堤防が決壊している。宇治市をはじめ周辺地域に過去最悪の甚大な被害をもたらした。その後これらの教訓をもとに建設されたのが天ケ瀬ダムであったのだ。淀川水系には数多くのダムが設置されているが、淀川本流に建設された唯一のダムである。またこのダムによって形成された人造湖はダム自体の形が羽を広げた鳳凰に見えることもあって「鳳凰湖」と名付けられている。美しい湖の周りには春の桜、秋の紅葉の名所にもなっており風光明媚な観光地でもある。更にここは宇治市街よりもきわめて至近距離に位置しており、世界文化遺産に登録されている平等院や宇治橋などもある。

  「水を制するものは世界を制す」とは最近見たテレビのドキュメントである。人間は水無くして生存は不可能。その水を確保するのに全人類が総力を合わせて、開発と助け合いが必要ではないかと思う次第である。 

撮影2008年秋