緑豊かな自然に包まれて「兵庫陶芸美術館」は、落着いた佇まいで私を迎えてくれた。周辺は清流「四斗谷川」に、美しい山裾に沿って歴史を感じる民家が続いていた。これらの集落はいずれも丹波焼の窯元であった。兵庫県篠山市今田町のこの辺りは、日本でも有数の焼物の町として栄えた特別の場所なのだ。 800年の歴史を誇る丹波焼は、瀬戸、常滑(いずれも愛知県)、越前(福井県)、信楽(滋賀県)、備前(岡山県)など、日本6古窯の1つとしてこれまで全国にその名が知られていた。時は過ぎ時代は変わっていった。この丹波の地に陶芸文化の振興を図る目的で、2005(平成17)年10月に待望の「兵庫陶芸美術館」がオープンしている。 ここは古き伝統から現在に至る陶芸作家の展示、資料収集と保存、更には調査研究が行われている。そして陶芸文化の人材育成、学習事業等の交流なども力が注がれている。嬉しいことに広い敷地内には、本格的な茶室(玄庵)が設けられ、丹波焼の茶器による「呈茶サービス」も実施されている。静かな環境と厳粛な茶道に接し、日頃の都会生活から開放されて、心洗われる不思議な体験であった。
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