私の友人に瀬戸内海の水先案内人をしている人がいる。外国航路の大きな船を、安全な水路に導いていく仕事である。特に瀬戸内海は島が多く、行き来する舟の数も多い難航路である。更には台風も含め悪天候もあり、一瞬たりとも気が抜けない。船長経験十数年のベテランであって、選ばれた人がパイロットとして任に当たっている。一度家を出ると何日も帰れない日が続く不規則な仕事に、体力も気力も要求される。 瀬戸内海航路で一番の難所は間違いなく来島海峡である。潮の流れは速く、時に10ノット(時速18km)に達することもある。ここは鳴門海峡、関門海峡と並んで日本有数の急潮といわれている。これらの海峡を近くで見ていると、そこはまるで川のような流れであった。 四国今治市と芸予諸島の大島間を、来島海峡と呼ばれているが、馬島などの小島群によって3つの水道に分かれている。この間を世界始の三連吊橋で結んだのが「瀬戸内しまなみ海道」の橋であった。1999(平成11)年5月のことである。ここは他と違って橋の高低差が80mもある。ちなみに伯方・大島大橋などは40mである。 |