◆武道の精神

 建物内に入ると靴を脱いで、黒光りをする木製の床に上がった。壁も天井も黒っぽい色で統一され、照明は暗く抑えられており、自然に落着いてくるから不思議だ。そして更に厳粛な空気が立ち込めているようにも感じられた。ここは松山市内にある「愛媛県立武道館」である。

 私も学生時代に柔道を嗜めた一人として、これまで講道館、日本武道館をはじめ、各地の柔道場、武道館で試合・練習に渡り歩いたものだ。そのような親しみもあって、日本一の規模と最新機能の設備を誇る、「愛媛県立武道館」を興味深く見学させて頂いた。見るからにユニークなこの建物には、県内産の木造がふんだんに使われており、木の温もりと柔らかさが伝わってくる。

 中庭には地元特産の「菊間瓦」の巨大な鬼瓦の面が飾られており、見た瞬間に武道の厳しさを感じる思いがした。この建物の名誉館長に、ロサンゼルスオリンピック柔道無差別級金メダリストの山下泰裕氏(全日本柔道選手権大会9連覇)が就任していることからも、親しみを感じる一つでもあった。

 日本の武道には世界中にまで広がった柔道を始め、空手道、合気道、居合道、弓道、剣道、なぎなた、少林寺拳法などその幅は広い。

 古来より武道は日本の土壌に根差して今日まで発展してきた。心身を鍛え、技を磨き、厳しき稽古を通して、「礼に始まり礼に終わる」とある如く、人間形成を図ってきた。私の人生にあっても、柔道を練習したことで丈夫な身体にして頂いた。更にどこまでも頑張ろうとする精神力も培ったものと、心から感謝している。 

撮影2007年夏