正面玄関を入ると音楽が流れてきた。センサーが感じ取ったのだ。それは子供の時よりよく聞きなれた曲であった。「♪〜しばしも休まず つち打つひびき とびちる火花よ はしる湯玉 ふいごの風さえ 息をもつがず 仕事に精だす 村のかじや〜♪」 これは唱歌「村のかじや」の一番である。 そこは「金物のまち」で有名な、兵庫県三木市にある金物資料館を訪ねた時のことであった。三木城址の敷地内に、1976(昭和51)年に完成している。ここでの金物の生産は、大工道具が主流を占めていた。鋸(のこぎり)、鑿(のみ)、鉋(かんな)、鏝(こて)、小刀(こがたな)などがある。しかし鋸一つ取ってみても大小様々で、用途に応じて形も様々で、これまで見たことのないユニークなものまであった。 しかし伝統を守り生き残っていくには、その時々のニーズに応じて作業工具、農機具、園芸用具等、多種多様の金物製品を、生産しなければならなかった。そうした努力があって今では、我が国屈指の金物特産地として、国内はもとより広く海外にまで優れた製品を供給するに至っている。 女系家族の中で男は私一人。時には家庭内で大工仕事もしなければならない時もあった。しかし中学生の頃に、家庭科の授業で使った道具しか我が家には無かった。もう少し道具が揃っていれば私も男、日曜大工として様々な日用品も作っていたに違いない。 |