◆相生ペーロン祭

 ペーロンとは聞き慣れない言葉である。兵庫県相生市は毎年五月の最終土・日曜日に、ペーロン祭が開催されている。これには花火大会やパレード、出店などに数万人の観光客が訪れ、町中が祭一色になって盛り上がる。なかでも最大のイベントはペーロン競漕であろう。龍を模った手漕ぎ舟でその速さを競うのである。

 ペーロンのルーツを辿ってみれば、そこは中国の約2300年前の長江以南の民族が、鳥の飾りをつけた鳥舟にあるといわれている。その後、漢王朝時代後期に龍舟競漕が始まったとされている。ペーロンとは「白龍」の中国音のパイロンが訛ったもの。

 我が国には1655年に中国船が、長崎港を訪れた際に伝来されている。そしてその長崎より瀬戸内海にある造船の町・相生港には、1922(大正11)年に伝えられ現在に至っている。舟の長さは12m、幅1.58mの木造船。艇長、舵取、銅鑼、太鼓の各担当と、木の櫂を持つ漕手28名の合計32名が乗り込んでいる。

 このペーロン競漕には兵庫県内外70チーム以上がエントリーしている。「ドン!デン!ジャン!」銅鑼と太鼓の囃子に合せて、往復600mの距離の速さを競う。波飛沫を上げて一斉にスタートする光景は、大変な迫力と興奮を覚える。周りから大きな応援合戦が繰り広げられる。 正面にはまるで龍宮城のような中国風の豪華な建物が見える。それはレストラン、売店、それに温泉施設のある道の駅。ここは日中友好の歴史的絆が、身体で感じられる町なのだ。

撮影2007年春