瀬戸内海は古来より、海上ルートの重要な役割を果たしてきた。遠くは中国、朝鮮との国際交易として。また九州、瀬戸内各地より神戸、大阪、京都、奈良へ通じていたのだ。全国を旅していると立派な門構えに、大きな蔵・建物を持った屋敷に出会うことがある。よく見ると玄関横に杉玉がぶら下がっている。それは酒造会社のお酒がありますとの合図なのだ。 岡山県瀬戸内市牛窓は古くから港町として栄えた所だ。ここは小さな町ではあるが牛窓町役場前に、創業して177年の歴史を誇る高祖酒造(千寿)があった。酒造りには水・米・技術の大事な3つのポイントが必要となる。この辺りには吉井川の伏流水をふんだんに用いることができる。そして備中米を高度精白し、更には備中杜氏の伝統技術など、素晴らしい環境に恵まれている。 近年の日本酒離れが気掛かりである。戦前までは日本酒が全ての主流であったが、戦後の時代の変化とともに、ウィスキー、ワイン、そして何といってもビールの出現が大きい。更に最近の焼酎ブームは若者から女性に至るまで、日本酒を完全に抜き去ってしまった。生き残りを掛けて各社とも必至の研究・努力をしているが、決定打はまだ出ていない。しかし岡山の地の利を生かして、若者・女性向けの「白桃酒」「マスカット酒」「メロン酒」等、新たなる商品開発に力を入れている。 古い町並みの中を歩いた。牛窓港関町バス終点近くに、古くて大きな建物を見つけた。それは高祖酒造の江戸時代からの発祥蔵であった。土壁の一部は落ち少々痛んではいるが、格子窓の主屋、赤レンガの煙突等、当時の繁栄の姿が如何に凄いものであるかを知ることができた。 一時は全国で酒造メーカーは5000社ほどあった。今は1500社までに淘汰されている。時代の波を止めることは出来ないであろう。しかし日本酒は本当に美味い酒であることを私は知っている。故に頑張って生き残って頂きたい。 撮影2007年春
|