◆紀淡海峡の波

 「紀淡海峡」それは紀州(和歌山)と淡路島の間にある海峡で、大阪湾と太平洋の出入口となっている。東京湾は東京から関東に続いている。大阪湾は大阪から関西に広がっている。両方とも素晴らしい立地条件に恵まれた湾だ。この湾の恩恵を受けて、東京も大阪も大発展したのである。

 紀淡海峡には神島、地の島、沖ノ島、虎島が緩やかな曲線を描いて浮かんでいる。これらの島を称して友が島と呼んでいる。神戸からも大阪からも、薄っすらと島影を見ることが出来る。

 私が中学生(45年前)の時であった。海洋少年団の一員として頑張っていた。カッター(救命ボート)を漕ぎ、手旗信号を使い、船と海に関する知識を勉強した。そんな中で神戸港より友が島へ、海洋実習訓練が行われた。上陸して驚いた。ここは旧日本軍の要塞であったのだ。砲台跡、弾薬庫、軍馬舎等、当時の面影がそのまま残されていた。1888(明治21)年に陸軍の用地となって以来、第2次大戦の敗戦まで、一般人は上陸を禁じられていた。これは淡路島側の方でも同じで、砲台跡がたくさん残っている。生石展望台では錆付いた長砲の砲身部分を、今も見ることが出来る。

 大阪湾より和歌山県の白浜まで、客船に乗って研修会に参加したことがある。波静かな大阪湾内では、大いに船旅を楽しんだ。しかし紀淡海峡を出て太平洋に入った途端に、波は荒海に変わり船は大きく揺れ続けた。私はトイレに入ったきり完全にギブアップであった。海峡の内と外ではまるで自然環境が違っている。帰りは電車にした。その車内で夢を見た。戦争も船酔いももう結構だ。

撮影2006年春