日本の故郷のイメージを語れと言われれば、私にはすぐに目に浮かぶ情景がある。それは清らかな小川が流れ、庭には生活に必要な分だけの野菜が植えられ、そして柿の木にはたくさんの柿と、茅葺屋根の家がある田舎風景だ。そして縁側に腰掛けてお茶を飲みながら、ゆったりとした時間が流れていく光景が思い描かれる。 そんな絵に書いたような場所を訪ねてみた。そこは京都府のほぼ中央に位置する美山町であった。町の96%が山林で、800m〜900m級の山々に囲まれていた。その山間部を縫うように由良川の源流は美しい水を湛えて流れていた。ポツンポツンと茅葺屋根の家が見えてくる。目指すは「茅葺屋根の里・北村」である。 この集落は文化庁の「重要伝統的建築物群保存地区」に選定されている。テレビで見る「日本昔ばなし」の世界が突然現れた。ここには住宅の32棟をはじめ、民族資料館や店舗など38棟の茅葺屋根の家が集まっている。茅葺の材料は、茅、麦わら、麻の軸木を組み合わせて屋根を葺いていく。自然界の素材をもとに、日本人の昔からの生活の知恵が、そこに巧みに生かされているのだ。
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