加賀百万石と謳われた石川県金沢城。その近くの大通りから少し入ると、通りの両側には120mほどもあろうか、木造2階建の江戸時代を思わせる、古い家並みが続いていた。そして紅柄格子(べんがらごうし)の何か異様な雰囲気を感じさせる通りは、まるで時代劇の映画に出てくるセットのようでもあった。 ここは金沢市内に3ヶ所ある茶屋街の一つ「ひがし茶屋街」である。浅野川北側の北国海道の城下入口にあり、1820(文政3)年に加賀藩の許しを得て茶屋街が開かれた。夕方にもなればお茶屋や料亭から、三味線、太鼓の音が聞こえ、部屋の明かりが通りをぼんやりと写し出す。今もここでは情緒漂う雰囲気を残しているようだ。 現在大半のお店は観光客用に変身している。特に個性的な建物内を有効利用して、喫茶店、甘味処、食事、更には金沢特産の工芸品を中心にした土産物店等が軒を並べる。どのお店も気軽に入っていけるから嬉しくなってくる。私はこのとき少々歩き疲れていたこともあって、座敷に上がって珈琲を頂いた。通された所は実に落着きのある和室で、格子戸越しに通りを歩く人が見えていた。ゆっくりと寛げたことに本当に満足いくものであった。
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