◆金沢・ひがし茶屋街

 加賀百万石と謳われた石川県金沢城。その近くの大通りから少し入ると、通りの両側には120mほどもあろうか、木造2階建の江戸時代を思わせる、古い家並みが続いていた。そして紅柄格子(べんがらごうし)の何か異様な雰囲気を感じさせる通りは、まるで時代劇の映画に出てくるセットのようでもあった。

 ここは金沢市内に3ヶ所ある茶屋街の一つ「ひがし茶屋街」である。浅野川北側の北国海道の城下入口にあり、1820(文政3)年に加賀藩の許しを得て茶屋街が開かれた。夕方にもなればお茶屋や料亭から、三味線、太鼓の音が聞こえ、部屋の明かりが通りをぼんやりと写し出す。今もここでは情緒漂う雰囲気を残しているようだ。

 現在大半のお店は観光客用に変身している。特に個性的な建物内を有効利用して、喫茶店、甘味処、食事、更には金沢特産の工芸品を中心にした土産物店等が軒を並べる。どのお店も気軽に入っていけるから嬉しくなってくる。私はこのとき少々歩き疲れていたこともあって、座敷に上がって珈琲を頂いた。通された所は実に落着きのある和室で、格子戸越しに通りを歩く人が見えていた。ゆっくりと寛げたことに本当に満足いくものであった。

 ここは金沢市指定文化財となっており、更には伝統的建造物保存地区にもなっている。このような地域は「にし茶屋街」、そして「主計町(かずえまち)」があり、小京都といわれる金沢の町が、古くから発展した歴史が感じ取れる。これらの街を保存するのは大変な努力がいったに違いない。しかしここには様々な人間模様が残されているような気がするのだ。

撮影2005年春