◆大歩危・小歩危

 四国とは一つの島を四つの国に分けられていることから付けられた。徳島県、香川県、愛媛県、高知県からなっている。四国の中心地は何処?と聞かれても、高松?それとも松山?それとも?結局は分からないのだ。それぞれが一箇所を中心に集中しているのでなく、全てが外の方に向いているのだ。香川は瀬戸大橋を通じて岡山に、愛媛は瀬戸内しまなみ海道を通じて広島に、徳島は鳴門海峡大橋・明石海峡大橋を通じて神戸・大阪に、そして高知は太平洋を通じて日本各地に向いている。長い歴史を通して、独自の地域社会と文化が発達したように思われる。

 一方、自然環境に目を向けると、北は温暖な瀬戸内海に面した平野部分。南は太平洋に面した海岸線部分。その中間に広がる山間部分の、大きくは三つに分けられる。その中で四国最長の川は吉野川。四国四県全てにまたがって流れている唯一の川である。徳島県山中奥深い所では、激流によって荒々しく削られた深い渓谷がむき出しになっている。

 大歩危(おおぼけ・約2km)、小歩危(こぼけ・約1km)は、これらの渓谷と山腹の険しい場所を指している。大股で歩いても小股で歩いても、危険な場所から名付けられたのであろうか。その険しい山肌を縫うようにしてJR土讃線の鉄道が走っていた。そして山を削り橋を足して、川に沿って道路はどこまでも続いていた。過酷な大自然の中にあっても、それを乗り越える人間の技術と努力は、本当に素晴らしいものだと感銘を受けた。

撮影2006年秋