ここで一日中ぼんやりとしながら、爽やかな秋を楽しんでいたいと願った。池には鯉が悠々とした姿を見せてくれている。紅葉には少し早いものの、薄っすらと色付き始めたのを感じ取れる。静かだ。何も聞こえない。時折、小鳥の囀りと風の音が聞こえる。まるでここに居ると、時間が止まっているように思えてくるから不思議だ。 滋賀県彦根城のすぐ隣に旧大名庭園「玄宮園」はあった。ここは4代彦根藩主・井伊直興が1677(延宝5)年に造園したものである。この庭園は中国唐時代の玄宗皇帝の離宮になどられたもので、江戸時代初期の庭を今日まで守り伝えている名園である。 大きな池に突き出すように臨池閣が建ち、築山には彦根藩の賓客をもてなす客殿の鳳翔台がある。ここでは嬉しいことに抹茶を楽しむことが出来、心静かに頂くことが出来た。夏ともなると池に咲く菖蒲の花の香りで、園内を包み込んでくれる。池の周りには中国湖南省洞庭湖の瀟湘(しょうしょう)八景にちなんで、地元の近江八景が表現されていた。これらの見事な庭園は1951(昭和26)年、国の名勝に指定されている。
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