◆巨漢・六本木ヒルズ

 それは陸に浮かぶ巨大な戦艦のようであった。東京のど真ん中に一際は目立つ、54階建のオフィスビル「六本木ヒルズ森タワー」であった。近くから見ると圧倒されてしまう。さらに周りには800戸の高級マンション「六本木ヒルズレジデンス」等が建ち並んでいる。ここには「居」と「働」一体型の、新しい街づくりが出来たように思えた。

 森タワーには楽天、ライブドア、ヤフージャパンなどのIT産業などを始めとして、新しい日本経済を動かす企業が集まってきた。そのなかに村上ファンドも含まれていた。更にはアメリカの投資銀行・ゴールドマンサックスもあり、時代の先端を行く企業がフロアーを独占していた。

 この六本木ヒルズは日本最大級の都市再開発計画として、17年の歳月を掛けて2003(平成15)年に完成している。しかしオープンしてから僅か1年足らずの間に、正面入口の大型自動回転ドアによる事故が32件も起こっている。そして2004(平成16)年3月には、ついに恐れていた6歳の男の子の尊い命が失われる事故になってしまった。巨大ビルの中に潜む死角がそこにあったのだ。 とは言え、六本木ヒルズは今や東京の新しい名所となっている。日本国内は当然ながら、外国からの観光客も後を絶たない。一目で良いから最上階からの展望を楽しみたい。そして流行の最先端のお店を見てみたい。そんな願望が後を絶たない。

 大学時代に六本木に行くことは皆無であった。就職して給料29000円の時に、「キャラバンサライ」というナイトレストランに行った。そこでデザートを注文したが、ブドウとイチゴが2~3個大きな皿にのっていたが、値段は何と2300円であった。このデザート一皿で私の給料の1割近くが消えていく。ショックであった。六本木――そこは私の憧れの町であったのだ。

撮影2006年冬