美しい近江平野が広がっていた。琵琶湖畔に面して東北の地に滋賀県長浜市はあった。市街地には北国街道(北陸街道と中山道とを結ぶ街道)が通っている。そこには1900(明治33)年に建てられた第百三十銀行長浜支店が、この町の中心部に位置していた。この建物は黒漆喰の外観であったことから、周辺の人達より「黒壁銀行」の愛称で親しまれていた。 和洋折衷の重厚なこの建物はその後、明治銀行長浜支店、紡績会社の配送所、専売公社の営業所と様々に変遷していった。そして1987(昭和62)年には長浜カトリック教会となり、名物の黒壁も白く塗られたりもした。教会の移転に伴い、この建物もついに取り壊しに決定となった。しかしこれまで長い間、町のシンボルとして誰からも親しまれてきた建物である。市民より建物保存運動が始まったのは当然のことであった。その結果1989(平成元)年「黒壁ガラス館」としてオープンしたのである。 壁が再び黒く塗り直されたのは、長年の市民の願いであった。さらに白い窓枠が一層引き立て役として映えていた。その甲斐があってこの建物は、有形文化財の指定を受けている。内部には優れたガラス製品から手軽なお土産品に至るまで、見ていても楽しくなる品々が展示販売されていた。
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