自転車の荷台には布団袋と、みかん箱一つが積まれていた。私はそれらが落ちないように、後ろから支えながら、駅まで父が運転して運んでくれた。これが東京で暮らす私の全ての家財であった。それは「チッキ」という鉄道小荷物便で、神戸の駅から東京の駅までの輸送であった。1966(昭和41)年4月。大学の入学式5日前のことであった。今思えば侘しく、僅かばかりの引越し荷物であった。しかし胸の中は多少の不安があるものの、それを越える大きな希望と勇気に燃える出陣であった。 現在の日本は車社会と言っても過言ではない。都会に住む我が家でも車が3台ある。田舎に行けば車の依存は更に進み、一人一台の時代となっている。高速道路、一般道路も整備され、カーフェリーまで車優先となっている。自然のニーズとでもいうのか鉄道便は廃れ、トラック便による宅配便が大発展を遂げている。神戸から東京まで一日で「ドア ツー ドア」つまり、入口から入口まで運んでくれる誠にありがたく便利なものとなった。こうしたトラック便の先駆けとなった企業の一つが「佐川急便」であった。 |