川の表面をまるで湯気でも上がっているように、薄い霧が覆っていた。朝の太陽に照らされて、白いはずの霧が黄色く見えてくる。冬の寒い時期は、大気よりも水温の方が高いときに、このような現象が起こると聞いたことがある。大自然が織成す素晴らしい美の世界であった。
ここは兵庫県の中央から北上して、豊岡市を通って日本海に流れ込む一級河川の「円山川」であった。河口付近には城崎温泉があり、そのすぐ横を大河は流れていた。満々と水を湛え今にも溢れんばかりであった。この辺りは満潮時にもなると海水が川に流れ込み、上流16kmに達することもある。但馬地方の母なる丸山川は、四季折々の美しさを楽しめると共に、川下りの屋形船もあり、河口近くには今も渡し舟が運航している。長い歴史を肌で感じ、昔の情緒を楽しめるように思えた。 しかしそんな円山川も時として、自然の恐ろしい牙をむき出しにして襲ってくることがある。昭和34年の伊勢湾台風、昭和51年、平成2年、大きな被害を出している。災害は忘れた頃にやってくるとは本当だ。更には2004(平成16)年10月20日は、忘れもしない台風23号での大災害となった。増水した円山川が豊岡市内で決壊。8000棟以上が浸水してしまう。所によって氾濫した水は屋根まで達し、全てが水没してしまった。
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