「よ〜い スタート!」開始の合図とともに、一斉に皿そばを食べだした。50−60人が胸にゼッケンナンバーを付け、5分間に何枚食べられるかを競うもの。私は見学に行っただけだったが、周りからの進めもあって参加させられた。結果は52枚食べて最高枚数となった。しかしルールにより女性には10枚のハンディーが与えられており、43枚食べた人が優勝となった。小柄な女性の優勝に会場は大いに盛り上がった。私は彼女の引き立て役となったようだ。 兵庫県の北に位置する豊岡市内に、出石(いずし)という地名がある。そこは日本一の手打ち皿そばの名所となっている。薬味にはネギ、山葵、大根おろし、とろろ、卵が用意される。好きなように食べればいいのだが、一人前で5皿のそばが付いてくる。最後に熱いそば湯で一杯が堪らなく美味い。この地の信条「三たて」とは、挽きたて、打ちたて、湯がきたてとなる。観光地もあってか、値段は少々高めのような気がするが味は極上である。この小さな町に50軒以上のそば屋が、ひしめき合っている。 何故この地にこれだけのそば屋が繁栄したのか。それは1706(宝永3)年、信州のそば処・上田より、出石藩主として仙石氏がお国替えとなった際、そば職人をここに連れてきたのが始まりであった。更に透きとおるような白を特長とした「出石焼」の焼物を発展させる。今ではこれらは国の伝統工芸品に指定されている。歴史は力であり伝統である。今年で300年を迎えた。 |