◆玄武洞の神秘

 美しき円山川。満々と水を湛え、滔々と流れて行く。川の終着点も間近である。そしてその先は日本海の大海原が開けている。そんな川岸に沿うように、山肌が荒々しく抉り取られたように見えるところがあった。そこは兵庫県豊岡市にある、天然記念物に指定されている玄武洞であった。

約6000年前に波に洗われて姿を現した玄武洞は、江戸時代に採石場として、石を取った跡地が今に残されている。玄武洞の魅力は何といっても見事な節理にある。この節理は今から160万年前に起こった火山活動により、マグマが地表に流れ出して固まったもの。その時に冷えて体積が小さくなるために出来た割れ目である。この柱状の節理は、40〜50cmの太さで5〜6角形をしており、15cmほどの板状になっている。

 ここ玄武洞公園には5つの洞がある。円山川の上流から青龍洞、玄武洞、白虎洞、南朱雀洞、北朱雀洞。なかでも青龍洞では高さ33m、巾40mもあり、正面に立つと圧巻である。石柱は中央に向かって傾斜しており、最も長い節理が見られる。それはまるでトコロテンを押し出したようにも見え、不思議な形であった。

 これらの洞の前に立って見つめていると、如何なる芸術家であっても作りえないであろう。自然が作り出した素晴らしい大作である。私は大自然の神秘を感じざるを得なかった。そして地球上にはまだまだたくさんの不思議な神秘が、隠されているようなロマンを夢見ている。

撮影2006年夏