「あそこが龍宮城だよ」と、父が指差して教えてくれた。指の先をたどると、その先には確かに龍宮城のような建物が立っていた。そこは海岸より少し沖にある小さな島であった。「あれが浦島太郎に出てくる龍宮城なのか」と思った。小学校2年生の時のことである。 しかしよく考えてみると、浦島太郎は助けた亀に誘われて、海底にある龍宮城に行っている。そのことを思い出すと、今見えるものは龍宮城もどき建物に過ぎないのである。でも夢を与えてくれる楽しいユーモアーに、思わず笑ってしまうのだ。 兵庫県豊岡市内より車で15分余りも走ると、美しい大海原の日本海に出てくる。日和山遊園は海岸線に沿って、ホテル、水族園、レストラン、土産物売り場が並んでいる観光名所だ。
夏の海は実に波静かな美しい海である。これまで何度も海水浴を楽しんだことを覚えている。海水はどこまでも透明で、素潜りして楽しんだものだ。しかし冬の日本海は全くの正反対になってしまう。波は激しく風も強く、まるで毎日が台風の中にいるようである。大きなうねりの白波は海岸を飲み込むかのように、次から次へと休むことなく襲い繋って来る。
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