◆日和山海岸

 「あそこが龍宮城だよ」と、父が指差して教えてくれた。指の先をたどると、その先には確かに龍宮城のような建物が立っていた。そこは海岸より少し沖にある小さな島であった。「あれが浦島太郎に出てくる龍宮城なのか」と思った。小学校2年生の時のことである。

 しかしよく考えてみると、浦島太郎は助けた亀に誘われて、海底にある龍宮城に行っている。そのことを思い出すと、今見えるものは龍宮城もどき建物に過ぎないのである。でも夢を与えてくれる楽しいユーモアーに、思わず笑ってしまうのだ。

 兵庫県豊岡市内より車で15分余りも走ると、美しい大海原の日本海に出てくる。日和山遊園は海岸線に沿って、ホテル、水族園、レストラン、土産物売り場が並んでいる観光名所だ。 夏の海は実に波静かな美しい海である。これまで何度も海水浴を楽しんだことを覚えている。海水はどこまでも透明で、素潜りして楽しんだものだ。しかし冬の日本海は全くの正反対になってしまう。波は激しく風も強く、まるで毎日が台風の中にいるようである。大きなうねりの白波は海岸を飲み込むかのように、次から次へと休むことなく襲い繋って来る。

 この辺りの名産は何といっても「松葉ガニ(ズワイガニ)」である。毎年11月初旬に解禁されて一斉にカニ漁が始まる。私もカニを食べによく日本海に出かけたものだ。カニの刺身、焼きガニ、カニチリ等、フルコースとなると結構な値段になる。しかし美味い!私だけに限らず、甲羅から身を取るのは結構大変な作業となる。いったん食べ始めると、誰もが無口になってカニと格闘する。しゃべる人も、お酒を飲む人もいない。そんな余裕は全くないのだ。忘れられないカニの味をもう一度・・・・。

撮影2006年夏