◆法務省の赤レンガ

 もともと日本建築の歴史には、赤レンガの建物はなかった。明治時代に入って西洋建築のブームが起り、近代化への波は急速に進んでいった。特にヨーロッパ建築は人気があり、競って建てられるようになった。中でも赤レンガ造りの重厚で豪華な建物は、全国各地で建てられるようになった。その一つが皇居・桜田門のすぐ西側に、一際は美しい赤レンガの建物があった。そこには「法務省」の看板が上がっていた。

 このような建物はこれまでも見たことがある。東京駅、京都国立博物館、北海道庁旧本庁舎をはじめ、全国各地で銀行、工場、倉庫等を見ることが出来る。法務省のこの建物は1895(明治28)年に、ドイツからエンデとベックマンの二人の建築家を招聘して完成させたもの。しかしいくら見ていても飽きないほど美しい。建築デザインもさることながら、赤いレンガの色合いが何とも美しいのだ。

 私個人にとってはこれまで法務省との関わりは、戸籍、登記くらいで極めて少なくない。法務省の仕事とは何だろう。法制、法秩序の意地、国民の権利擁護等があるが、あまりよく分からないのが私の実感だ。しかし司法制度、民事行政、刑事・民事法の立案、人権擁護、出入国管理、公安調査等、国の行政にとっては重要な位置を占めている。

 正面入口に近づくと、何か職務質問でもされそうな雰囲気であった。道路を隔てた北側には警視庁が建っている。周辺には警察官がやたらと目に付く。ここは日本の心臓部であり、有能な人材が集まる宝庫でもある。さすがは霞ケ関だ。

撮影2006年夏