サラサラサラ…と音がする。見上げると笹が擦れ合って、爽やかな音色として聞こえてくる。ここは京都・嵐山の奥に位置する嵯峨野の竹林。よくテレビのコマーシャルにも出てくる有名なスポットだ。初めて来た人も、この光景に「あっ!」と声を上げてしまう。様々な雑誌等の写真でも、見たことがあるのであろう。
ここを訪ねたのは初夏の少々蒸し暑さを感じる日であった。嵐山の保津川沿いから、なだらかな坂道を登っていくと、息も上がり汗ばんでくる。しかし竹林の小道に差し掛かると、不思議なことに日陰の涼しさもあってか、身も心も癒されていくのを感じる。
竹林を見るとつい根本あたりに目がいってしまう。ひょっとして光り輝いている竹があるのでは。そしてかぐや姫がいるのでは。幾つになっても期待感で胸はときめく。さらに夜道に満月を見ると、かぐや姫がいるのでは。密かに今も信じている。子供の頃の夢・ロマンは決して忘れることはない。 竹取物語が書かれたのは平安時代であろうか。日本最古の物語とされる名作である。そこには出会いの喜び、家族としての愛情、そして愛別離苦が見事に描かれている。いくら時代の隔たりがあっても、人間の心の表現は今も昔も変わらないことを感じた。
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