◆京の竹林

 サラサラサラ…と音がする。見上げると笹が擦れ合って、爽やかな音色として聞こえてくる。ここは京都・嵐山の奥に位置する嵯峨野の竹林。よくテレビのコマーシャルにも出てくる有名なスポットだ。初めて来た人も、この光景に「あっ!」と声を上げてしまう。様々な雑誌等の写真でも、見たことがあるのであろう。  ここを訪ねたのは初夏の少々蒸し暑さを感じる日であった。嵐山の保津川沿いから、なだらかな坂道を登っていくと、息も上がり汗ばんでくる。しかし竹林の小道に差し掛かると、不思議なことに日陰の涼しさもあってか、身も心も癒されていくのを感じる。

 竹林を見るとつい根本あたりに目がいってしまう。ひょっとして光り輝いている竹があるのでは。そしてかぐや姫がいるのでは。幾つになっても期待感で胸はときめく。さらに夜道に満月を見ると、かぐや姫がいるのでは。密かに今も信じている。子供の頃の夢・ロマンは決して忘れることはない。

 竹取物語が書かれたのは平安時代であろうか。日本最古の物語とされる名作である。そこには出会いの喜び、家族としての愛情、そして愛別離苦が見事に描かれている。いくら時代の隔たりがあっても、人間の心の表現は今も昔も変わらないことを感じた。

 日本人は竹と深い関わりを持って今日まで生きてきた。竹の子料理、竹家具、竹人形、竹竿、釣竿、竹馬、水鉄砲、竹踏み、竹灰、その他様々に利用されている。発明王トーマス・エジソンの白熱電球は、竹を炭化させて電流を流して発光に成功。その竹のフィラメントは、京都の竹であったと記憶している。

 「 〜笹の葉 さ〜らさら のきばに ゆれる〜」もうすぐ七夕さま。子供の頃に戻ってロマン溢れる夢を、短冊に託し、大きな願いを掛けてみたいものだ。

撮影2006年夏