タクシーの運転手から「今はどんな花が見られるのでしょうか?」と尋ねられた。東京・文京区にある小石川植物園は、都会のど真ん中にあった。しかし少々交通便が悪いのと、疲れと暑さもあって滅多に乗らないタクシーの中での会話であった。私は咄嗟に「今は何と言ってもアジサイでしょう」と、植物の専門家気取りで答えてしまった。 ここは日本で最も古い植物園である。今から320年前の江戸時代。徳川綱吉が将軍になる前に、白山御殿の跡地に「小石川御薬園」を造ったのが、植物園の前身となっている。その後、明治の初期に設立された東京大学の付属植物園となり、今日まで一般公開されている。 この植物園は「東京大学大学院理学系研究科付属植物園」が正式名称である。ここは世界的に見ても有数な歴史を誇っており、日本の近代植物学の発祥の地でもある。本館に収められている植物標本は約85万点、植物学関連図書は約2万冊。これらは学問の研究資料として広く活用されている。
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