◆憧れの東京大学

 もし私が東大に入っていれば、間違いなく別の人生を歩んでいたであろうと想像する。国会議員、弁護士、実業家、それとも‥‥。夢は大きくどこまでも広がっていく。東大は誰もがあこがれる日本一優秀な大学なのだ。

 東京・文京区に東京大学はあった。本郷通りに面した長い塀の途中に、「赤門」とよばれる時代を感じさせる門があった。赤い木造の建物に瓦葺きの校門は、上野公園にある国立博物館にある「黒門」と同じ建物のように思えた。更にお茶の水駅近くにあった我が母校、中央大学の正門は「白門」と呼ばれていた。

 大学のキャンパスを歩いてみて感じることは、歴史と伝統を感じる学舎には、優秀な学生が日本の未来を担う、厚き情熱が染み込んだように見えた。すれ違う学生姿は特別なものを感じないが、何故か凛々しく思えてくるのは私の偏見であろうか。

 安田講堂前に立った時、ここはこれまで何度も見覚えがあった。それは1969(昭和44)年1月の寒い日であった。安田講堂を占領していた反日共系学生に対し、8500人の機動隊が導入された。建物内にはヘルメット姿の学生達が、火炎瓶を爆発させ立てこもった。放水車で対抗する様子はまるで戦争であった。全てのマスコミはリアルタイムで実況中継。激しい攻防戦の末、学生は排除された。

 東大の在学生は約29000人いる。これまでの日本の政財界を始め、あらゆる分野で有能な人材を輩出してきた東大。更なる未来に栄光あれと祈りつつ。

撮影2006年夏