◆祇園の町並み

 「♪〜 月はおぼろに東山 霞む夜毎の篝火に
  夢もいざよう紅ざくら しのぶ思いを振袖に 祇園恋しや だらりの帯よ

  夏は河原の夕涼み 白い襟足ぼんぼりに
 かくす涙の口紅も 燃えて身を焼く大文字 祇園恋しや だらりの帯よ 〜♪」

 祇園と聞くとすぐにこの歌が浮かんでくる。実に日本情緒溢れる優雅な曲である。歌っているのは藤本二三吉であり、往年の日本を代表する大スターであった。その娘・藤本二三代も全国に名を馳せた歌手で、「東京の空の下で」、「恋のマーブル通り」ほか、NHK紅白に4回も出場している。昭和30年代に大活躍している。その彼女とはこれまで何度も交流があり、親しくさせて頂いた思い出がある。

 京都・祇園の町をゆっくり歩くのは初めてのような気がする。ひょっとして舞妓さん、芸妓さんに会えるかも知れない期待感を持っていた。後で聞いた話だが、昼間に出会うことはまずないとのことだ。木造の古都・京都の香りが漂う、黒っぽい二階建ての建物が続いていた。所々に細い通路が奥まで続き、突き当りが正面玄関であったりする。独特の町並みである。

 昼食の場所を探していたが、古い屋敷そのものが料亭であったり、食事処であったりする。また屋号の小さな表札は挙がっているものの、何屋さんかは全く分からない。恐らく「お茶屋さん」と呼ばれる一見さんお断りの店であろう。私にはとてもご縁のない店なのである。でも男であれば、一度はここで豪遊してみたいものだと、淡い期待を夢見ているのだ。せめて夢だけでも――。

撮影2006年夏