半年くらいの短期間ではあったが、大阪市旭区に住んだことがある。そこはまるで陸の孤島のように思えた。山もなければ海もない、ただ密集した住宅地が何処までも続く、特長のない町であった。しかし短くとも私にとっては、忘れられない素晴らしい思い出がたくさん残っている。 淀川沿いの一角に「城北公園」はあった。ここは1876(明治9)年に開園した歴史のある公園である。大池の中央には噴水が勢いよく吹き上げていた。ここの名物は何といっても花菖蒲であろう。敷地内には150種類、13000株の色鮮やかな花菖蒲が咲き誇っていた。 園内は広々とした日本庭園で、箱庭のように美しく配置されていた。中央の池には色とりどりの華麗な花菖蒲が群生しており、色、形、大きさ等、様々な種類があることがすぐ分かった。日本にはこれまで江戸花菖蒲、熊本花菖蒲、伊勢花菖蒲の3ヶ所の地域、文化、気候等の違いから、3様のタイプに分かれていた。どれが一番美しいかって?それは私が見る限り、どの花も精一杯咲かせている時が、最高に輝いているように見えるのだ。どんな花でもその時が一番美しい瞬間なのである。
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