広島駅を降りるのが怖かった。それは原爆のイメージが、強く心に焼き付いていたからだ。戦後61年が経過している。しかし私のなかには未だに、1945(昭和20)年8月6日が重く伸し掛かっている。 8月6日は真夏の最も暑い盛りである。毎年この日だけはマスコミを初め、日本中の人達の目が広島平和記念公園に注がれる。その中心に慰霊碑はあった。はにわの家型に造られたアーチは、犠牲者の霊を雨露から守りたいという、設計者・丹下健三東大助教授の気持ちの表れなのか。その中に石碑が安置されていた。そこには「安らかに眠って下さい 過ちは繰返しませぬから」と刻まれていた。 今まさに世界では核軍縮が叫ばれている。広島型原爆で一度に20万人を殺傷するとして、この地球上に核はどれほど保有されているのか。なんと地球上の全人口60億人を、一度に全滅させることが出来るだけでなく、更に何十回,何百回、それ以上のものが存在するのだ。本当に恐ろしいことである。狂った人間の行為は一歩間違うと、この愛する地球を完全に破壊してしまう。そこにはもはや勝者も敗者も存在しない。人間自体の敗北以外の何者でもないのだ。
雨がしとしと降る日の訪問となった。その雰囲気から一層悲しみを誘う気分になってくる。何人かの人が手を合わせている。私も心を込めて合掌をさせて頂いた。不思議なことに心が落着いたように思えた。
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