◆自然と闘う錦帯橋

 今にも水戸黄門に、助さん角さんが出てきそうな雰囲気のする橋であった。それは山口県岩国市を流れる錦川に、架橋されている木造アーチ橋を渡りながらの感想である。その橋とは1922(大正11)年に国の名将に指定された「錦帯橋」である。この橋は日本三名橋(東京・日本橋、長崎・眼鏡橋)にも選ばれ、更に日本三大奇橋にも数えられている日本を代表する橋なのだ。

 300円の通行料を払って錦帯橋を往復した。直線にすれば193mだが、橋面にすると210mになる。周りから見ている分には非常に美しい橋に見えるが、五連のアーチからなるこの橋を登っては下り、登っては下りするとけっこう体力が消耗して疲れる。

 人類はこれまで「大自然」の驚異と戦い続けて今日に至っている。しかし完全に克服するに至っていない。川を譬えにとってみても、時にして大きな牙をむき出しにして、人命から財産まで奪い去ることもあった。事実、錦帯橋も造っては壊されての歴史を繰り返している。ごく最近の例でも昨年秋の台風14号では、第一橋の橋脚2基が流失している。  

 錦帯橋が造られたのは1673年。第三代岩国藩主・吉川広嘉の時であった。以降今日まで何回も災害に見舞われたが、廃橋になることはなかった。それはあまりにも美しき橋が持つ魅力がそうさせたのであろうか。自然が如何に恐ろしいものであっても、人間の知恵と努力でこの素晴らしき橋を永遠に護っていきたい。私は橋を渡りながら願いを込めつつそう思った。

撮影2006年春