地球上には我われがこれまで見たことのない大自然が、まだまだたくさん残されているように思う。ここ近年の映像技術の発達と共に、交通手段、情報通信網の発展により、世界の隅々まで調査が進んでいるようだ。また世界遺産の制定で、より一層加速しているように思われる。一人の人間がこれらを見て回ることは、費用、体力、時間の関係からも無理が生じる。したがってテレビを始め、グラビア等による映像を通して、自然を捉えたドキメンタリー番組は、私にとって大好きなひと時である。 その場所は四国・徳島県の吉野川沿いに程近い阿讃山脈にあった。「阿波の土柱」である。山肌にむき出しになった土柱が、天に向かってそそり立っている。その奇妙な地形が何とも珍しいのである。これは今から2〜3万年前、砂や粘土が扇状に堆積している所に、地殻変動や風雨によってできる浸食で、今日の地形が形成されたものと思われる。 なかでも千帽子山の波濤ヶ嶽は、高さ13m、南北90m、東西50mの巨大な土の群立で、国の天然記念物にも指定されている。自然が織成す驚異は、時に素晴らしい芸術作品を創造させるのだ。
阿波の土柱を含む「世界三大土柱」と呼ばれているものに、イタリア・チロルの土柱がある。ここは氷河が運んだ地層で岩塊を頭に残して、周りが風雨の浸食により柱状に林立したものである。またアメリカ・ロッキーの土柱は半乾燥地帯で、植物が育たない所で豪雨によって浸食されたものである。いずれも不思議な地形をしている珍しいロケーションである。
放浪画家で有名な山下清も「阿波の土柱」を描いている。34歳の時である。珍しさがそうさせたのであろう。私が訪ねた時には、何人かのカメラマンが三脚を立て、本格的に写真を撮っていたのが印象的であった。素晴らしい写真でありますように。 撮影2006年夏
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