◆丸亀城の石垣

 一昔前までは扇風機だけでも、快適な生活が出来ていた。もっと昔は「うちわ」が主流であった。現在人の多くはクーラーが無くては、もう生きていけない生活環境になってしまっている。私もその一人だ。時代は大きく変化している。「うちわ」は四国・香川県丸亀市で江戸時代より続いている特産品である。現在の生産量は年間約8300万本。全国の約90%のシェアを持っている。

 市内を車で移動していると、ひと期は目を引くお城に出会った。内堀から天守閣まで4層に重ねられた石垣は、60mもある日本一の高さを誇っており、これまで見たことのない見事なものであった。それはまるで芸術的な建物のように見えてくる。その頂点にはやや小ぶりながら、全国的にも珍しい木造の天守閣が現存している。大手門も含め、これらは重要文化財に指定されている名城なのだ。

 丸亀城は豊臣政権下の1587(天正15)年に、生駒親正が西讃岐の抑えとして高松城の次に築城したもの。私はお城があまり好きではない。築城に当たっては権力の象徴を誇るかのように、多くの費用と犠牲が伴っているからだ。そして何よりも戦いを想定した建物であるからだ。しかし時代は大きく変化している。平和な日本の今の時にあって、お城は無用の長物となってしまっている。

 私はそれでいいと思う。争いのない世界の方がもっと価値が高いのだ。むしろ現在のお城の役割は、その町の象徴として、文化・スポーツの会場として、更には市民の憩いの場として無くてはならない存在になっている。丸亀城の曲線美の石垣は、実に素晴らしい過去からの遺産である。

撮影2006年夏