そこはまるで桜の博物館のようであった。全長560mの通路に123種類、363本の満開の桜に会える。どの桜を見ても今が最高に美しく、満開で我われを迎えてくれる。大阪造幣局の桜の通り抜けは、毎年4月の中旬の1週間開放される。その歴史は古く、造幣局のある大阪市北区天満の旧淀川沿い一帯は、地名、駅名にも「桜ノ宮」とあるように、昔から桜の名所として多くの人に親しまれていた。
造幣局の敷地内にも見事な桜が咲いていた。遠藤謹助局長の提案で、より多くの人に見てもらおうとのことで、一般開放が始まったのである。今から123年前の1883(明治16)年のことである。今では「造幣局の桜の通り抜け」は、大阪の風物詩として無くてはならない春の祭りとなっている。一人の勇気ある提案と実行力は、やがて新しい歴史と伝統を創り上げ、多くの人に楽しみと安らぎを与えたのだ。
2006(平成18)年は4月12日〜18日までの7日間の通り抜けとなった。南門ゲートより北門ゲートまで、後戻りが出来ない「通り抜け」が言葉として定着したもので、大阪独特の言葉の文化であるように思う。私にとっては今回が初めての通り抜けとなった。桜の花がこんなにも種類があることを、改めて発見した思いであった。どの花も今が美しい盛りで、周りをキョロキョロしながら圧倒されてしまう。
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