我が家に横山大観の「夜桜」(コピー)の絵が、しばらくの間であったが掛けられていた。篝火の炎に照らされて、周りの暗さの中にあって、桜の木と淡いピンクの花弁が浮き上がっていた。実に幻想的で見事な夜桜であった。お陰で我が家は毎日が春であった。
数人の友人と共に、近くで買った弁当とビールを持って夜桜見物と洒落込んだ。時折散歩をする人に出会うものの、宴会をしている人はいなかった。しかしせっかく持ってきたのだからと、弁当を広げビールを飲むと、ブルブルと身震いがしてくる。寒いのだ。本当に震えるほど寒いのだ。桜を見る余裕など全くない。楽しいはずの対話もなく、ただ食べるだけで終わってしまった。この時期気候は激しく変化している。お陰であくる日は風邪気味で、2〜3日は調子が悪かったことを覚えている。それ以来、夜桜とはご縁がなかった。
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