まるで江戸時代にタイムスリップしたかのような町並みであった。今にも丁まげ姿に刀を指して侍が現れてきそうな、そして商人が忙しそうに小走りで駆けて行くような光景が目に浮かんでくる。日本情緒溢れる建物が並ぶ中で、突然古代ローマかギリシャを思わせる見事な建物に遭遇する。それは全く異質なものに私には映った。 美術を愛せる人になりたいと、子供の時より願っていた。しかし若い時には芸術に触れたり観賞したりするよりも、身体を動かすスポーツの方を私は選んだ。人間というのは歳と共に様々に変化するものなのであろう。肉体が衰えると同時に、美しい美術・芸術作品に触れると不思議な感動を覚えてくる。それが幾度となく体験を重ねることで、すっかり美術愛好家になってしまった。 岡山県倉敷市に日本で最初の私立の西洋美術を中心とした美術館がオープンした。1930(昭和5)年に設立された「大原美術館」である。地元事業家であった大原孫三郎が、これまでの日本美術収集に加え、画家・児島虎次郎との間で西洋美術の収集に力を入れる。ここではエル・グレコ、モネ、ルノアール、ゴーギャン、ピカソ、マチィス等の世界的なビッグアーティスト達と出会うことができる。
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