◆ここはデンマーク?

 ここは庶民の町・大阪だ。大阪湾岸に位置した天保山は、新しい町に生まれ変わっていた。1990(平成2)年に天保山リバービレッジがオープン。ここには巨大な水槽を持つ斬新的な「海遊館」、美術館「サントリーミュージアム」、更には大きな観覧車、遊園地などがある。そして多目的に使われる大きな広場では、大道芸人が楽しい技と芸を披露してくれ、大人から子供まで人気の場所になっている。

 これらの西隣は大阪湾に面し、川幅を広くした安治川が注ぎ込んでいる。その一角にどこかで見たような像が、海岸より数メートルの海中に設置されていた。よく見るとアンデルセン童話にある「人魚姫」の像であった。それは何とも寂しく悲しそうな顔の表情であった。「どうしたの?」と尋ねてみると「人魚姫」の話をしてくれた。

 素敵な王子を乗せた船が嵐で転覆。すると海の中を自由に泳げる人魚姫が、その王子を助けて岸まで運んだ。恋をしてしまった人魚姫は、王子の側に居たいがため人間に変身をする。しかしその代償として声が出なくなってしまう。海から救ったのは人魚姫であるが、それを話すことが出来ない。王子は岸で倒れていた自分を、その後に救ってくれた女性を命の恩人と勘違いして結婚してしまう。結局は失恋となってしまう。その悲しみが像となって残されたのだ。

 デンマーク・コペンハーゲン港には、本物の人魚姫(マーメイド)像がある。世界的に有名な観光スポットになっている。そのコペンハーゲン港と大阪港の文化交流の一環として、大阪市へ1995(平成7)年に贈られたもの。ブロンズ像の複製は高さ95cm。本物の5分の4の大きさだ。この人魚姫を見て私は、慰めの言葉をかけて掛けて上げたい心境になった。

撮影2006年 冬