◆冬の植物園

 2月の野外植物園ほど寂しいものはない。「京王フローラルガーデン アンジェ」は、新宿駅より京王多摩川駅の改札口のすぐ横にあった。都会の中では貴重なスペースであるものの、園内は一望できる程度の広さであった。入場料は300円と安いが、なかに入ってみてガッカリしてしまった。

 この時期、園内には花一つ咲いていない。そのなかで一本の蜜柑の木のみが、黄色く輝いていたのが印象的であった。客は私と障害を持つ車椅子の老人の二人だけ。園内は一面枯れ木色で覆われていた。空を見上げれば今にも泣き出しそうな天気である。気温も下がり身体も冷えてきた。見るものの環境によって、何故か私の気持ちまでも寂しく変化していくように思えてくる。

 そんな時、目の前にあるこの風景を見ながら、ふと目を閉じて想像をしてみた。時期は5月のゴールデンウィーク。全ての植物が春の日差しをいっぱいに浴び、新緑と満開の花々が咲き誇っている。あたり一面に花の持つ優雅な香りが流れ、心地よい太陽の温もりと輝き――。

 急にポツリと雨が降ってきた。残念なことに現実の世界に引き戻されてしまった。木の下で雨宿りをしていると、若い女性の作業員の方が、傘を持って走ってきてくれた。「良かったらこれ使って下さい」と。爽やかな声と笑