ここから足でも滑らせれば、間違いなく命はないだろうと思った。慎重に岩の道を渡った。間近から見る断崖絶壁は迫力満点だ。むき出しになったゴツゴツした岩肌は約1kmも続く。ここは福井県の日本海に面した日本随一の奇勝として名高い「東尋坊」である。 天然記念物にも指定されている東尋坊は、五角形、六角形の柱状の岩が集まった輝石安山岩で、世界に3か所(韓国の金剛山・ノルウェーの西海岸)しかない。地質学上稀少な地形なのである。冬の日本海は波が荒れることが多い。そんな時に砕けた波がシャボンの泡のように、岩礁を覆い烈風に舞う「波の華」も見られることもある。 子供の頃、父が東尋坊に行ったと聞かされて、その不思議な地名に大変興味を持っていた。「東尋坊」ってなんだろう。何処にあるのだろう。漢字を見ても全く想像がつかなかった。その後、妻と家族で夏休みに訪ね、観光船にも乗ってみた。父はここに来たのだと。
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