何と美しき雪景色であろうか。純白に輝いた山々。そして雪を掻き分けて急ぎ足で川は流れていく。学生時代に最も好きな授業が社会科であった。なかでも地理が得意で、時間の経つのも忘れて勉強したものだ。日本地図を広げて山脈、平野、川、海等の自然を学ぶなかで、忘れられないのが福井県を流れる「九頭竜川」であった。おそらく名前がユニークだったのであろう。九つの頭を持つ竜とでも読むのか。 九頭竜川は足羽川、日野川と共に、越の三川(さんせん)と呼ばれ、全長116kmある大河だ。福井市の北部を西に向かって、日本海に流れ込んでいる。福井平野はこれらの豊かな水源を元に、主に稲作で発展してきた。 一両電車に揺られて越前鉄道「福井駅」を出発して、終点の勝山駅に着いた。そこは一面の雪景色であった。地元の人達の誰もが長靴を履いており、それが雪国の生活を象徴しているように思えた。それに比べて私の磨かれた革靴は、まるで場違いのように思われた。駅からすぐ目の前には、雪を被った鉄橋が架かっており、その下には九頭竜川は悠然と流れていた。
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