◆ 夢が実現・由志園

 まるで別世界に来たように思えた。燃える紅葉、豪華絢爛の牡丹園、落着いた日本庭園。ここは島根県の波静かな中海に浮かぶ大根島。そのなかに「由志園」という大輪の牡丹と、四季折々の花が観賞できる見事な日本庭園が存在したのだ。

 1975(昭和50)年4月1日に開園。ここに至るまで一人の男の熱き情熱と夢があった。風光明媚な大根島に、日本庭園を造ろうと志したのが門脇由蔵であった。しかし夢と現実には大きな隔たりがあった。当時の大根島はまだ陸続きとなっていなかった。厳しい状況下のなかで、大きな庭石、大量の土、多彩な樹木等を全国より集め、ガット船一隻で運び切った。そして未開の土地に台車1台と、ブルトーダー1台がフル回転。 8年という長い年月が経過した。それは不可能を可能にした偉大な事業であった。しかし残念なことに由蔵は、志し半ばにして他界。その志を継いだ息子・栄が見事に夢を実現させた。この庭園は由蔵が志したことから「由志園」と名付けられた。感動的な話である。

 「牡丹の館」に入ると、満開になった色とりどりの牡丹の大輪に圧倒された。まるで花の女王のような優雅さを感じた。「立てばシャクヤク 座れば牡丹 歩く姿は百合の花」とは若き日の妻ではなく、美人の姿を形容する言葉として有名だ。それほど美しい花なのである。そして島根県の花にも指定されている。

 美しい庭園を歩きながら、男の夢・ロマンに思いを馳せてみた。夢のある人は幸せだ。そして夢のある人は、生き生きとして希望に燃えている。目も輝いて見える。私も夢を持って生きている。それも途轍もない大きな夢を。

撮影2005年 秋