四国のなかを悠々と流れる大河があった。吉野川の河口はまるで四国の大自然の血流が、紀伊水道の大海に流れ込んでいくように見えた。愛媛県西条市石鎚山(1896m)の瓶ヶ森を源とする吉野川は、全長194kmとなる。四国四県全てを流域とする唯一の川である。 中流には大歩危、小歩危という険しい渓谷もあり、日本の秘境の地域でもあるようだ。そこには「かずら橋」という、蔦のような「かずら」と木材を組み合わせて出来ている橋があった。数年前に訪ねたことがある。多くの観光客が恐る恐る、かずらに?まりながら渡っていく姿は、実にスリリングなものである。勿論足元から隙間を通して見えるのは、大自然の谷底を流れる川である。私には通行料まで払って、渡る気持ちにはとてもなれなかった。 河畔には様々な文化が発展していった。肥沃な土地は豊富な作物を育て、人々の生活を支えた。こうした恵みの感謝の気持ちの現われなのか、徳島名物「阿波踊り」は、独特の明るく陽気な人柄に伝えられているように思えてならない。私の母方のルーツも阿波であり、明るくのんびりした母であった。
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