情熱的な恋をしてみたい。人生のなかで誰もが一度は夢見たことであろう。特に映画の世界では様々な愛情物語があった。そのなかで涙を誘うものは、お互いに愛し合っていても結ばれぬ恋ではないだろうか。「慕情」、「ウエストサイド物語」、「ある愛の詩」、「ゴースト」、「ひまわり」等、数え上げれば限がない。誰もがハッピーエンドを望み期待するが、切なく悲しい恋に終わる場合もある。 福井県越前市の郊外に味真野苑という公園がある。北陸自動車道の武生インターより車で10分の所だ。そのなかに万葉館という立派な建物があった。そこは万葉集の恋の歌を中心に展示されている。この物語は今から1200年余り昔の奈良時代のこと。天皇に仕える女官は恋愛を禁止されていた。その罪により福井県味真野に流された中臣宅守(なかとみのやかもり)と、都に残された妻・狭野弟上娘子(さののおとがみのおとめ)は、引き裂かれた運命を嘆きあった。その後、再会を誓い合う情熱的な恋の歌を贈りあった。万葉集に残されている二人の歌は、千年の時を経てもなお変わらず、私たちの心に深く訴えかけるものがあるようだ。園内には二人の恋の贈答歌のうち、15首が歌碑になっている。 「君が行く 道の長手を 繰り畳(たた)ね 焼き滅ぼさむ 天(あめ)の火もかも」 (狭野弟上娘子)
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