◆福井城に失望

 先人たちが残した素晴らしい歴史遺産は沢山ある。その一つに城がある。大阪城、名古屋城、姫路城等、その大半が戦国時代から江戸時代にかけて築城されている。その数は半世紀の間に全国各地で三千ほどに達している。その広大な敷地は現在の過密した都市の中にあって、掛替えのない空間として存在している。今からこれだけの空間を確保しようとして、都市計画をしても不可能なことだ。

 現在これらの多くは市民に開放され、各種記念館、公園として憩いの場となっている。更に歴史の探求、名所旧跡としての観光資源、文化・社会交流など、地域発展に多大いなる貢献を果たしている。そうした意味からすれば、先人達の偉業に心から感謝したいものだ。

 さて北陸・福井県の県庁所在地は福井市にある。JR福井駅から北西へ歩いてすぐ。周りから見ると満々と水を湛えた大きな堀に、歴史情緒溢れる見事な石垣のある城跡が目を引く。その中を見て驚いた。そこには高層の近代建築に鉄骨の塔が建てられていった。それは何と県庁であり、県警察本部であるとのこと。景観破壊、歴史破壊も甚だしく、誠に残念でならなかった。

 天下分け目の関が原の合戦で大勝利した徳川家康。時代は徳川幕府の磐石な基礎が築かれていった。北陸の押さえとして家康は、武勇に優れた次男・結城秀康を派遣。その秀康は6年の歳月をかけて、1606年福井城を完成させている。

 権力で造られた城も、来年で400年の歴史を迎える。時代は変わって今では同じ場所に、福井県の行政が陣取っている。歴史資産を利用することは簡単だが、一度破壊してしまうと、二度と再生は出来ない。私は貴重な歴史資源を違った形で市民に開放して欲しいと思った。

撮影2005年 秋