◆ 明治村は貴重な財産

 日本の歴史のなかで、最も大きな変化を遂げたのは明治時代の開幕であったと思う。鎌倉幕府以来約700年間にわたって続いた武家政治は、音を立てて崩れ落ち終焉を告げたのである。

 「散切り頭(ちょんまげを切り落として刈り込んだ髪形)をたたいてみれば文明開化の音がする」と唄われたように、長い鎖国より目覚めた日本は、これまでの文化より西洋文化を理想とした。新橋――横浜間に鉄道が開通。学校制度、郵便制度、廃藩置県等々。生活様式から服装、髪形に至るまで大変革が遂げられた。 1868(明治元)年より138年の歳月が経過した。その間、日本は悲しい戦争の歴史も、世界に誇る大発展の歴史も経験した。現在人にとっては「明治は遠くなりにけり」と、懐かしい遥か昔の出来事となってしまった。

 愛知県犬山市内に博物館「明治村」が開村している。1965(昭和40)年のことだ。ここには国の重要文化財10件を含む、貴重な建築物がそのまま残されている。明治42年の建物で三重県伊勢市の「宇治山田郵便局」もその一つだ。その他67の建物が展示されており、それぞれユニークで興味を誘う魅力がある。なかでも「帝国ホテル中央玄関」には感動した。これは昭和42年まで日本が誇る国際的一流ホテルとして活躍。ホテルの中に入っただけで、何か私のステータスがアップしたように感じられたのが不思議であった。ここに入ればその時代の主人公にさせてくれるのかも知れない。

 撮影2005年 秋