◆まん丸な「甲山」

 それは高校2年生の社会科の授業の時であった。火山の形を黒板に書いて教えてくれた。「コニーデ」はすり鉢を逆さにした形をしており、円錐状火山で富士山のように長くのびた山裾が美しい。「アスピーデ」、「カルデラ」、そして「トロイデ」の説明を聞いた時、驚きと共に親しみを感じたのだ。というのはいつも見ている西宮市の「甲山」が、その代表的な山だと教科書に出ていたからだ。

 甲山(かぶとやま)は六甲山脈の東端に位置しており、半円形をした非常にユニークな形の山である。何処から見てもまん丸で目立った山であった。標高は309m。トロイデ式火山とは鐘状火山ともいって、ネバネバした溶岩が地下からゆっくりと上昇。周りに流れず盛り上がって、釣鐘のようにそのまま固まってできた火山のこと。 甲山は1200万年以上前に噴火。その後の侵食によって今の形になったという説も。気の遠くなる昔の話である。今は死火山となっている。その他、活火山、休火山などの分類をしていたが、現在は「活火山」と「活火山ではない火山」に分けられているようだ。ちなみに富士山は活火山である。

 甲山の東側の山麓に「甲山森林公園」がある。これは1968(昭和43)年に明治100年を記念して造られた兵庫県立公園。広さは77haもある。私は42年前にこの辺りをドライブしたことがある。見渡す限り「すすき」が一面を覆い、大自然を満喫できる素晴らしい所であった。その時に時代劇の映画ロケが行われていたことを今でも思い出す。 写真でも分かるように、甲山周辺は阪神間を一望できる超高級住宅地になっている。自然の中での贅沢な生活が羨ましく思える。しかしこれ以上、日本を代表する大切な山を、住宅が侵略しないでもらいたいと私は願っている。

撮影2005年 夏