遥か彼方からでも美しい芝生で覆われた小高い山が見える。奈良の名所「若草山」だ。記憶をたどると小学5年生の時に、神戸から遠足で訪ねたことがある。子供心に若草山の上から、滑ったり転がったりしたことを思い出す。それほど芝は綺麗に見えたのだ。しかし実際は見た目よりも急斜面で、それに鹿の糞があちこちに転がっており、すぐにその気はなくなった。 この辺りに鹿が沢山いるのには驚いた。これらの鹿は全てが野生なのだ。私のイメージには野生はいつ何時、その正体を現すかわからないという恐怖感が絶えずある。しかしここの鹿は全く違う。人間慣れしているのだ。鹿せんべいを手に持っただけで周りから数頭が寄ってくる。上手にあげないと一度に全てを食べられてしまう。この光景は何十年、何百年も変わらないのだ。
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