◆諏訪湖はオアシス

 土曜の夜11時過ぎの列車に乗って新宿駅を出発した。目的地は長野県の諏訪湖であった。7月下旬の東京は異常に暑い日が続いていた。1971(昭和46)年のことである。列車内は殆ど満席状態で、あまり眠ることが出来なかった。上諏訪駅に着いたのは朝早くであった。

 改札口を出ると目の前には、朝靄かかる諏訪湖が広がっていた。早速ボートに乗って湖面を走らせた。さわやかな空気であった。身体中の全ての細胞が、蘇るような躍動を感じた。これまで多忙を極める連続の日々であった。長時間列車に揺られて来た甲斐があった。身も心もリフレッシュである。ここは日本を代表する避暑地なのだ。

 あれから34年の歳月が流れた。今も諏訪湖は同じ状態で私を迎えてくれるのか。楽しみと少々の不安を感じながら車を走らせた。嬉しいことに諏訪湖は昔と同じであった。しかし町並みが大きく時代を変えていた。すっかり都会になってしまっていた。

 最近ショッキングな写真を見た。それは旧ソ連から独立したウズベキスタンという国がある。中央アジアに位置している。ここには有名なアラル海という巨大な湖があった。しかしこれが近い将来消えて無くなろうとしているのだ。つまりアラル海に流入している川の水を引き込んで、綿花の栽培に当ててしまったのだ。綿花の生産は世界第4位となったが、アラル海の水位は20mも低下した。過っての港町は50kmも遠ざかり、砂漠の中に舟が取り残される奇妙なものであった。

 美しい日本。自然と人間生活の共生が大事な時代となっている。この国土にいつまでも緑豊かな大自然が、消えることがないよう願うものである。

撮影2005年 春