◆代々木公園のカラス

 「紅い梅」と「白い梅」の花が並んで咲いていた。紅白のお目出度い梅の花になるのだが、植えられた人の配慮があったのだろう。その温かい気持ちが伝わってくる思いがした。それは代々木公園の入り口近くで元気いっぱいに咲いていた。しかし園内に入ってみると、華やかな花は殆どなかった。むしろ落ち着いた感じがしたのだ。

 代々木公園は新宿と渋谷の大都会の間に、広大な憩いの場所として存在していた。隣接する明治神宮の木々と重なり合い、緑濃い森は一層広がって見えた。ここは元陸軍代々木練兵場であった。戦後は米軍の宿舎・ワシントンハイツとなり、更に東京オリンピックの選手村を経て公園となっている。公園であってよかったと思う。現代の時代にあって、これほどの公園を新たに造ることは不可能であるからだ。

 中央に進むにつれて大きな池が見えてきた。そこには大小3基の噴水があり、時に随分高くまで吹き上げており、おそらく20m前後はあったのではないだろうか。水の持つ白い光と力強さが感じられた。

 都会独特の騒音のようなものは聞こえなかった。しかし「カァー カァー  カァー」とカラスの鳴き声がやたらと大きく、うるさいほどに感じられた。カラスが多いのには驚きであった。私にとってカラスはあまりいいイメージではない。我われの目にはむしろ悪役として写っている。しかしここのカラスは池に入って羽をバタバタさせながら、楽しそうに水浴びをしている。身体を洗っているのか、遊んでいるのか。私にはその仕草が実に可愛らしく見えた。カラスも可愛いのだという一面を発見した。ほんの少しの時間であったが幸せを感じさせてくれた。

撮影2005年 春