海は何処までも眩しく輝いていた。温かい昼下がりであった。春はすぐそばにやって来ている。動かない山をじっと見ていても、そのうち飽きてしまうものだ。しかし海は違う。絶えず動いている。流れている。私にはまるで息遣いが聞こえてくるように思える。まして船が行き交う光景は、しばらく見惚れしまい飽きることはない。ここは瀬戸内海の東端に位置する、姫路城より南西の海に面した岬だ。 ここから見えるのは広々とした大海原と、ぽっかり浮かぶ島々である。オリーブの島「小豆島」はさすがに大きい。そして砂利採掘の家島諸島。瀬戸の海は静かで、まるで大きな湖のように見えてくる。 「♪〜 海はひろいな
大きいな 月がのぼるし 日がしずむ 海は大なみ 青いなみ ゆれてどこまで
つづくやら 海にお船を うかばして いってみたいな
よその国 」 この歌の題名はなんだったけ?海を見ただけで自然に口から出てくる「♪〜海は広いな〜」。 娘に聞くと即座に「海」と答えてくれた。そうだ!これは小学一年生で習う文部省唱歌なのだ。
私のお祖母ちゃん(父方の母)は、四国・香川県志度の出身。娘時代にそこから伝馬船(小舟)に乗って、100キロを超える海を越えて、神戸までたどり着いたという。それは命がけの船旅であったに違いない。私が見ている目前のこの海を通ったのであろう。それは100年も前のことである。そのお祖母ちゃんは22年前に亡くなった。92歳の長寿であった。10人の子供を生み質素な生活であった。
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