それは時代に取り残された古い駅であった。終着駅ということもあるのか、長閑で何となく活気が感じられない。それが私の感じた「JR日光駅」の第一印象である。海からさほど離れていない東京駅から新幹線に乗り換えて、単線の日光駅まで2時間近くかかった。その間に山が一つもないのだから関東平野が如何に広いかが分かる。 駅から外に出てみると周りは高い山が連なり、それも全てが雪山であった。それは言葉で表現できないほど、雪が織り成す美しいロケーションであった。そしてもう一つ驚いたことがある。振り返って駅を見てみると、何ともクラシックな木造二階建ての建物であった。一目で洋風と分かるネオ・ルネッサンス様式のユニークな駅であった。 この駅は1912(大正1)年に完成している。その当時は洋風建物が流行していたのか、原宿駅、小田原駅、門司港駅をはじめ、全国各地で同じような建物が建てられている。駅のほか公共性の高い建物にも競って建てられたようだ。
駅の二階で日光の写真展を開催しているとのこと。私は楽しみにしながら木造の階段を上がって行った。驚いたことにそこはあまりにも立派な部屋であった。それもそのはず、ここは大正天皇が行幸の際に用いられた貴賓室であったとのこと。天井にはホテルで見るような豪華なシャンゼリアが吊られていた。 |